飲食店のデジタル集客を支援するAIサービスで全国へ

お話ししてくれた方:山下 裕也さん(代表取締役/会津大学 大学院在学中)
会社名 | 株式会社Pignet |
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代表者 | 山下 裕也 |
業種 | 飲食店向けサービス業 |
事業概要 | 飲食店向け集客サービスの提供など AIを活用したSNS(Instagram、X)およびGoogleビジネスプロフィールへの投稿の自動作成・一括投稿サービス |
設立 | 2024年9月 |
所在地 | 福島県会津若松市 |
企業サイト | https://pignet.jp |
創業のきっかけ
飲食店の集客を支援する
新たなサービスの提供を

私は元々、おいしいものを食べ歩くことが好きで、様々な飲食店に足を運んでいます。そこで感じたのが、多くのお店にとってユーザーが来店するきっかけとなっているデジタル集客を使いこなせず、集客に課題を抱えているということでした。具体的には、Googleビジネスプロフィールや各種SNSといったデジタルツールを活用できていない状況です。お店に聞いてみると「お店の運営が手一杯で更新の時間がない」「そもそも何を投稿すればいいかわからない」という声が多く聞かれました。
そこで飲食店が手軽にデジタルツールを活用し集客できるツール「Pignet(ピグネット)」を開発しました。これは多くの方が使える「LINE」を使いキーワードや写真を設定するだけで、Googleビジネスプロフィール、Instagram、X(旧Twitter)の3つのプラットフォーム向けに最適化された投稿をAIで自動生成し、一括投稿できるツールです。この取り組みは経済産業省の「アオタケプロジェクト」に採択され、専門家の助言を受けながらより実用的な形に進化させ、本格的にサービス展開することとなりました。
※アオタケプロジェクトについて
https://aizu-startups-foundation.com/aotake/top/
※アオタケプロジェクト:採択者紹介
https://aizu-startups-foundation.com/aotake/I2zxNSG5
※アオタケプロジェクト:サービスのリリースについて
https://aizu-startups-foundation.com/aotake/r3HeqQoo
創業時に工夫したこと、大変だったこと

業務分担と時間管理の明確化で
学業と起業の両立を実現
私自身、家業が自営業だったこともあり大学在学中に起業を意識し、地域ベンチャー創生支援財団の創業支援会起業を考えて関連団体に参加をしていました。そして「アオタケプロジェクト」に採択されたことが起業の決定的なきっかけとなりました。
実際に起業してみて大変だったのは、学業と事業の両立でした。授業や論文作成と並行しながらリサーチ、開発、営業活動を状況に応じて行わなくてはなりません。性質の異なる複数のタスクをうまく回すために、スケジュール管理を徹底し、やるべきことを明確化することで対応しました。また、業務を抱え込まず、仲間のエンジニアに委託して運営体制を整えたことで、開発・運営の効率が向上しました。
事業を行う体制を整えながら、飲食店オーナーとの対話を重ねて現場の課題を理解し、サービスの実用性も高めました。その結果「これは便利だ!」という声をいただき、導入店舗も増加しました。事業の成長とともに業務分担や時間管理、意思決定の難しさもどんどん増しましたが、優先順位を明確にして業務の委譲を進めることで乗り越えました。
現在の状況
代理店制度の導入による
サービスの全国展開

AIを活用した飲食店向けSNS投稿支援ツール「Pignet」は、LINEで画像と簡単な説明を送るだけで投稿内容を自動生成・一括投稿できる操作の簡単さとその集客効果で高評価をいただいています。試験運用で協力いただいた店舗では、SNSのインプレッション数が平均235%アップしたり、Googleビジネスプロフィールのインタラクション数が175%アップしたケースも。忙しい飲食店にとっては、「投稿にかける時間を削減しながら、結果的に集客効果を高められる」 という点が大きな魅力になっていると感じます。
おかげさまで、地域の商工会や他県の飲食店からも導入に関する問い合わせが増えている中、代理店制度の導入により契約件数がますます伸びています。販売パートナーを活用した営業で、これまで届かなかった店舗にも導入が進み、サービスの認知度が向上しました。最初は自分で営業をしていたのですが限界を感じ、飲食店向けのSNS運用を行う企業と提携したのです。また、AIによる投稿の自動生成の向上と定期的な更新によって、検索結果の上位表示を実現する仕組みを構築。カスタマーサポートの強化にも力を入れ、利用者の声を反映したアップデートを継続的に行っています。
創業してよかったこと・今後の目標

会津で起業し得た学びを
次世代へ繋げていきたい
起業して最も感じたのは、行動が新たなチャンスを生むということです。サービスの展開を通じて飲食店経営者や起業家とのつながりが増え、事業の可能性が広がりました。また、多くの飲食店の方々から「Pignetがあって助かる!」という声をいただき、行っている事業の価値も実感しました。さらに、開発だけでなく、営業やマーケティング、人材採用など、会社を動かすあらゆるプロセスに関われますし、その中で自分自身も成長している実感があります。
今後は「Pignet」の契約店舗数の拡大に加え、チェーン店などの大企業向けの新サービス開発にも取り組みます。同時に、会津大学から起業文化をもっと広め、地元での活躍の場を増やしたいと考えています。会津大学では優秀なエンジニアが育つものの、多くが東京へ流出してしまうのが現状です。だからこそ地元でも成長できる環境を整え、新たな選択肢を提供したい。一つひとつの取り組みが積み重なれば、挑戦の機会が生まれ、起業文化が根付き、会津大生の活躍の場が広がっていくはずです。
取材・撮影場所:会津大学産学イノベーションセンター(UBIC)・会津大学 学生食堂
※記事の内容は取材当時のものです