我々が注目すべき点は、この新たな産業改革のなかでどのように自らのビジネスを活性化するか、あるいは新たなビジネスを創造していくかである。産業はその生産、流通、消費の全体に渡って再構築に迫られるであろうし、またベンチャー企業の起業プロセスおよび重点的なビジネス分野も変化するであろう。
すでに気づかれた人もいるであろうが、商品は全世界にネットされる。恐らく2010年頃には現在のTV所有者以上の数億人がネットワーク上のユーザとなり、彼らは潜在的な顧客となる。しかも世界に情報を発信するコストは地方の電話代と変わらない。とすれば、いかにビジネスマンはユーザに自分のコンピュータの窓を開かせる興味のあるプレゼンテーションを行うか、言い換えればいかに世界のネットワークの中を走り回る個性のある仮想営業マンを作り出すかによって売り上げが決定されるのである。もし、読者の誰かがコンピュータグラフィックスによる映像制作の専門家ならば、あなたは店舗を持たなくても、また社員を雇わなくてもよい。何十人もの仮想人間をコンピュータの中に創造し、ビジネスを構築しうる。現実にあなたしか出来ないことは、よりよい商品を見つけだすこと、あるいは生産をすること、およびただ働きでも海外出張でも文句を言うことのない、これらの優れた仮想人間を創造する能力があれば良いのである。もし後者の能力に疑問のある場合にも心配はいらない。なぜならば仮想人材派遣業と称する仮想人間をフロッピーでリースする企業が現れることは間違いないからである。もし、あなたが信用取引上のリスクを避けたいのであれば、このような時代に対応した保険機構も生まれるであろう。
これだけの予測の上に立ったとしてもどれほどのニュービジネスが生まれるのだろうか。メディアの変貌によって環境がどれだけ変化するかの一例を分かりやすく述べたつもりであるが、心しなければならないのは当然現実と予測のギァップである。
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そうはいっても問題は今何ができるかが重要である。例えば、商品を世界のネットワークに乗せたとする。注文、受注、発送、決済のそれぞれはどうするのか。発展の過渡的な現実にあってはどのような場合であっても、既成の方式と新たな方式が混在するのは避けがたい。コンピュータによる広告から注文を得たとしても、現状においてはその後の処理はすべての従来の方法で対応しなければならないであろう。これらは10〜15年の中で一つ一つ解決される問題である。しかし、メディアの変化によって顧客の絶対数が劇的に変化するとき営業の手段が変わり、また極めて短い間に上記の体制を整えられてゆく中で、もし我々がよりビジネスを拡大したいのであれば、目は常にこの動きを追わなければならない。メディアは顧客として捉えれば諸刃の剣である。地元の多くの顧客も、とくに若い世代はこの時代にあってはコンピュータの窓を通して世界の市場に目を向けるであろう。その反面、世界中の人々があなたの商品を手に取るように眺めることもできる。恐らく予測できることは日常的な生鮮食品市場を除けば80%以上の顧客は地元から消え、その数百万倍の潜在顧客を窓の向こうにもつことになろう。しかしこれもあなたがメディアを自分の見方として捉えるか、よそ者として捉えるかで得るもの失うものが決まるのである。
もしあなたがマルチメディアに関心のあるもののコンピュータ恐怖症を自認する人であるのならば、最初にすべきことはネットワークビジネスとは何か。自分の商品をどのようにしてネットワークに乗せるか。ここから学び、実践することである。この始まりには大手も中小企業もない。このプロセスを活用できるものが新たなビジネスの勝利者となるのである。
会津大学マルチメディアセンターはメディアの研究だけではなく県民の教育と啓蒙の場でもある。世界にマーケットを築くために大いに活用されることを期待する。
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