「こねっと・プラン」
今、無限の可能性を秘めた子供たちに、マルチメディアコミュニケーションの環境を提供しよう、という取り組みがいろいろな形でなされています。「100校プロジェクト*」や世界各国から300校が参加している「ワールズスクールジャパン*」、「メディアキッズ*」、「APICNET*」など、枚挙にいとまがありません。その中で、昨年参加校が決まり、そして具体的な活動が始まる「こねっと・プラン」を紹介します。
(「*印」項目については、次ページに簡単な解説があります。)
先進国では、マルチメディアを活用した教育が、環境や福祉と並ぶ重要課題に位置づけられ、企業や市民を取り込んだ大規模なプロジェクトが進められています。日本においても21世紀を担う子供たちに時代の潮流に遅れない国際感覚や創造力を培ってほしい、また、地域の壁を越えて新しく生まれる交流を通して多くの友人、仲間をつくってほしいという願いが込められて「こねっとプラン」が始まりました。子どもネットワークから名付けられた「こねっと」は、全国の小・中・高等学校及び特殊教育諸学校に、インターネットを中心としたマルチメディアを利用した教育環境整備を支援していくものです。文部省の協力を得て、1996年5月から学校への募集が開始され、日本全国約1,000の推薦校が決まりました。福島県の場合は、20校の指定枠があり表1の20校が指定校となっています。
また、11月にはNTT大手町ビルにあるマルチメディアビジネス開発部をメイン会場に、全国の「こねっと・プラン参加校」とロサンジェルス会場を、TV会議システムとインターネットで結び、キックオフが行われました。インターネットを利用した教育に対する文部省からの支援メッセージや、参加校から今後の活用計画発表などがあり、ロサンジェルスからは、第1回“こねっとセミナー”として、音楽界で人気が高く、「こねっと・プラン推進協議会」の会員でもある小室哲哉氏の講演が行われ、その後子供たちとの意見交換セミナーが、TV会議システムを通して行われました。
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具体的な支援策としては、3つをあげることができます。
まず始めに「インターネット接続、利用に関するコンサルティング」があります。これはインターネット接続を行う際の、使用するパソコンやソフトウエアの選定から、通信機器の設定やインターネット接続事業者(プロバイダ)の選定。WWW、電子メール等を利用するために必要な操作方法や、学校からの情報発信を行うために必要なホームページ作成技術の修得のための相談、などがあげられます。これはアメリカ「NetDay96*」のように、1人のエンジニア・サラリーマンの提案から始まったとされるような、地域のボランティア支援態勢は国内では、まだ整ってはいません。そのため「こねっと・プラン」の趣旨に賛同した会員で設立された「こねっと・プラン推進協議会*」が母体となり支援がすすめられています。
2つめとしては、インターネット接続環境づくりの支援として参加校それぞれに一定額が寄付され、ダイヤルアップ接続によるインターネット環境づくりの一助としてISDN通信機器(DSU,ディジタル電話)の設置および、TAやブラウザ・ソフトの購入そしてプロバイダ料金充当用の資金などにあてられます。
そして3つめが「インターネットを快適に利用するためのコンテンツ等の提供」として世界の情報、地域の情報などを紹介するホームページの提供や「こねっと・プラン」参加校相互の先生同士、生徒同士での情報交換を行うための電子メール同報機能(メーリングリスト)の提供などがあります。
マルチメディア環境を整備することだけがこのプロジェクトの目的ではありません。「実際に学校での教育に役立ててもらう」ことが、真に目指すところです。“学校現場で何が必要か”、“どういった支援ができるのか”といった面からの具体的施策を、環境整備に続く支援策として検討されています。これらは、環境整備とほぼ同時に進め、「こねっと・ワールド*」というホームページの中に施策が盛り込まれています。このホームページでは大使館や官公庁、各種団体からの協力を得て情報を提供するとともに、NTTの社員を含むボランティア約800名の協力による“子供たちへのQ&Aコーナー”、子供たちが参加する企画などが掲載されています。学校からのマルチメディアを活用した計画の中には、海外のプロジェクトとの連携による、画像情報などマルチメディアの特性を活かした教育用各種コンテンツの利用や、海外を含めた他校との交流があげられています。地域の壁を越えた教育にこそ、ネットワークの威力が発揮されるところなのかもしれません。海外の企業や大使館の協力を得て、「こねっと・プラン」に一緒に参加したい海外の学校を紹介したり、先生や子供たちが自由に意見交換などができる場を「こねっと・ワールド」の中に設け、交流のきっかけ作りを支援しています。協議会の会員で構成される「利用促進部会」の中で、それぞれの企業が協力し合い、異なる分野からの支援策が検討されていますが、学校教育の専門家ではありません。そこで、学識経験者や小、中、高等学校の現場の先生方で構成される「利用促進部会顧問」や「文部省」の助言や提言をもとに、学校現場の声を反映させた支援ができるように、手探りながらも進められています。その中には、学校が共同ですすめていくプロジェクトなどが含まれています。
「こねっと・プラン」参加校は約1,000校ですが、学校間交流や共同プロジェクトなどの対象は参加校に限定していません。できるだけ多くの学校にマルチメディアを活用した教育の利点を発見してもらい、そして近い将来、官民一体となった社会全体の活動により、全国の学校に同じような環境が整うこと、それが「こねっと・プラン」の最終目標といえるでしょう。
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