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センター長(写真)


会津大学
マルチメディアセンター長
國井 利泰
会津大学マルチメディアセンターの目指すもの
 会津大学マルチメディアセンターは、「地域から世界へ」と開かれた大学を目指す会津大学にとって、いわば地域と世界への玄関の役を果たす施設です。
 ところで、なぜマルチメディアセンターを会津大学の玄関として選んだかについて説明しておく必要があります。ご承知の通り会津大学は我が国初のコンピュータ理工学部を設置した大学としてスタートしました。コンピュータこそ人間の知性を社会の発展に活かす上での知的生産商業自動化の唯一の知的自動機械であるからです。出来の良い機械なら本来は使いかたを習わなくても誰もが使えるべきものです。ところが、まだコンピュータに関する理工学は発展途上にあります。最も創造性を要する分野でありますが、人間のように視聴覚、味覚、嗅覚、触覚という五感を備えたコンピュータが出来るようにする迄には、まだまだ時間がかかります。これが出来れば、コンピュータも人間により近くなります。五感に対応した複数のメディアのことを、マルチメディアと呼びます。会津大学マルチメディアセンターはかなり進んだコンセプトのもとに立案されました。通常の視聴覚関連のメディアに加えて、触覚に当たるメディアの中心としての人間の運動機能を、床加重ベクトル測定と人体動作の光学的計測を通じて解析し表示する独自の設備を備えています。小宇宙とも呼ばれる不思議かつ高度な人体の動作機能の謎に挑戦しようというわけです。これが分かると、スポーツ、医学、工芸、美術、演劇、教育、研究等の幅広い分野で活躍し天才とか名人と呼ばれる人々の極致の名人芸が解明できます。すると、名人芸を万人のものにし、かつそのコンピュータによる知的自動化を達成出来ます。次の世紀に向けての知性ある高度社会と高度文化の建設に、真っ正面から貢献でき、参加できる事になります。このような、人間味ある暖かい血の通った社会の実現に向けての地域との協力体制整備、人類の英知を世界から集約する国際マルチメディア通信網整備も、会津大学マルチメディアセンターの大きな目標です。
 このような意味で、会津大学マルチメディアセンターが会津大学の地域と世界への玄関なのです。
 マルチメディアについての科学技術、利用技術、マルチメディア情報の中身であるコンテンツの整備も、会津大学マルチメディアセンターの重要な任務です。マルチメディア電子化カタログをマルチメディアネットワークに乗せるためのソフトウェア的支援の道具としてのマルチメディア情報制作支援ツール開発も、会津大学マルチメディアセンターの重要な目標となっています。さらに、情報スーパーハイウェイ整備も国際的に進む中で、会津大学ではそのためのプロ養成の大学院新設計画を実現に移しつつあります。それと併せて、会津大学マルチメディアセンターでは、プロ養成のための社会人講座の一層の高度化も、重要な目標であります。コンピュータ理工学分野の中でも最先端に属するマルチメディアは、その研究開発に携われる人材が社会的に極端に不足しています。逆に見ると、永遠に不況しらずの分野がマルチメディアであるということもできます。
 本来コンピュータはその内部に独自の情報世界を建設し発展させられる能力を秘めています。我々人間の脳と、似た機能です。コンピュータの場合、情報世界から直接制御できるロボットを動かして、現実世界で生産も出来れば商業も出来ます。金融取引も、情報制御の金融端末を直接情報世界から動かして、完全にコンピュータで自動化可能です。このような情報の動きを、マルチメディアで表現し、人間の直感に訴えるようにすることは、今後の人類社会発展にとってその運命を左右するほどの重要性を持っています。そうでないと、人間が把握できないまま知的自動化がすすみ、情報世界が現実世界に暴走する危険もはらんでいます。マルチメディアセンターは、知的情報世界の持つこのような日向と陰の両面を訪れる方々に知ってもらう啓蒙センター的機能も発揮して貰うこともその目指すところとなっていることを告げて、結びと致します。
P  R  O  F  I  L  E
くにいとしやす/会津大学学長/理学博士
昭和13年(1938年)東京生まれ
東京大学卒業/東京大学大学院理学系研究所化学専門課程修了
平成5年3月まで東京大学理学部情報科学科教授
CGS(国際コンピュータ・グラフィックス学会)創設会長
IEEF(アメリカ電気電子技術者学会)フェロー
ドイツのシュプリンガー社刊「The Visual Computer」誌編集長
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